十社大神の拝殿に掛けられている絵馬は、
江戸時代後期につくられた、とても貴重なものです。
天照大神様が天の岩戸から出てこられると世の中が明るさを取り戻したという
神話「天の岩戸開き」を描いたもので、
製作したのは、江戸時代後期に活躍した実力派の絵師・水上北萊(みずかみ・ほくらい)です。
水上北萊(みずかみ・ほくらい)は、
名を勇次と言って、元は金沢藩士でした。
江戸に出て学んだあと、
小杉に来て水上屋弥三郎の娘婿になって水上姓を名乗るようになったと言います。
小杉では、寺子屋の師匠をつとめて多くの門弟を育成したほか、
南画・陶芸・彫刻に優れた才を発揮したということです。
小杉には、各地に水上北萊のつくった絵画や像が残されていて、
十社大神の境内には、北萊を顕彰する碑も残されています。
ところで、以前、当神社を訪問されたイギリス人の方が、
この「天の岩戸開き」の絵馬に強い関心を示されました。
その人は、はじめは様々な説明を静かに聞いていましたが、
この絵馬が目に入ったとたん、大きな声を出されました。
「コレハ、スバラシイ! イッタイ、ドナタガ、エガイタノデスカ?」
つたない説明をしている間、
その方は、この絵馬を長い時間をかけて隅々までご覧になっていました。
西洋の方がくぎ付けになるほどの存在感のある絵馬が奉納されていることは、
とても誇らしいことですね。
※令和元年7月11日掲載分より