十社大神には、「鍾馗(しょうき)」を描いた絵馬があります。
鍾馗は、中国の唐の時代の人物で、強面(こわもて)でとても優秀な人物だったと伝わります。
鍾馗の死後、皇帝の玄宗が感染病にかかって床に伏していたら、夢の中に鍾馗が現れたのだとか。
皇帝の夢の中で、鍾馗は鬼を次々に捕まえて食べ、夢から覚めると、皇帝の病は治っていたということです。
これ以来、鍾馗は「疫病退散の神様」「魔除けの神様」と信じられ、崇められるようになったとされます。
この絵馬を十社大神に奉納したのは、江戸時代から明治時代にかけて活躍した画家・学者の川波友太郎。
学者としては、16歳で四方碩学の門に入り、国学詩文や経書を研究し、蘭学、天文暦学、生理薬物化学まで幅広く学び、明治維新後は地元の和親学校の校長を務め、『源氏物語詳解』『越中旧記』などの書物を著わしました。
画家としても、尾張南画の代表的画家である山本梅逸に師事するなど、本格的に学んでいました。
多才で幅広く活躍した彼が、どんな願いを込めて奉納したのか。その理由は残されていませんが、「鍾馗さま」を題材に選んだということは、先に書いたようなことを念頭に置いていたのではないでしょうか。
新型コロナウイルス感染症は、いったん収束したようですが、第二波が心配されますし、私達には新しい生活様式を身に着けることが求められていて、不安は尽きません。
そこで、十社大神では、少しでも皆様の不安解消につながればと、6月24日(水)から6月30日(火)までの「茅の輪」の設置期間中、この「鍾馗さま」の絵馬を一般公開することにしました。
場所は、当神社の宝物殿で、期間中は午前8時半から午後5時まで、どなたでもご覧いただけるようにする予定です。
この写真でも構図はよくわかりますが、実物は直径113㎝もある大きなものです。実際にその迫力をご覧くださいませ。