宝物殿にある騎馬武者の絵馬について、解説文を取り付けました。
この騎馬武者は、鎌倉時代前半に活躍した、佐々木信綱(ささき・のぶつな)です。
絵馬に描かれているのは、鎌倉幕府と後鳥羽上皇方が戦った承久の乱の一場面。
宇治川の合戦です。
この戦いは、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも時間をかけて描いていました。
宇治川の合戦の際に、幕府方である佐々木信綱は、渡河作戦で見事に先陣を果たし、幕府方の勝利に貢献しました。
のちに、渡河の先陣が認められた佐々木信綱は、その勲功で近江国(現在の滋賀県)で広い領土を獲得。地元では、神様として祀られたと言います。
子孫は、京極氏や六角氏となって、長く栄えました。
この絵馬は、江戸時代中期の元文2年(1737年)に奉納されたもので、
きっと、佐々木信綱にあやかって、仕事の成功や子孫繁栄を願って製作・奉納されたものと考えられます。
絵馬を見ると、
顔は可愛らしいようにも見えますが、波は、馬との距離感にあわせて様々な色や形を使い分けて描かれており、随所にこだわりの感じられる力作だと思います。
取り付けた解説文では、吾妻鏡の記載も引用しながら、さらにくわしく紹介しています。
吾妻鏡には、川を挟んだ両陣営の攻防が詳しく書かれていて、いかにこの渡河作戦が困難な状況で行われたかがよく感じ取れます。
興味のある方には、機会がありましたら、ぜひ宝物殿にて現物を拝観していただけたらと思います。
十社大神は、今後も、数々の絵馬について、少しずつ解説文を追加していく予定です。